なぜ新茶の味は他のお茶と違うのか?【新茶の味を引き立てる淹れ方もご紹介】
4月上旬から5月上旬頃にかけて収穫された新芽茶葉は、それ以降に収穫される番茶に比べ味も香りも良く茶葉中でも最も品質が高く、新茶(一番茶)と呼ばれます。この記事ではなぜ新茶と番茶の味に違いが生じるのかについて解説していきます。
緑茶の味に関わる主な成分
緑茶の味に関わる主な成分には、アミノ酸、カテキン、 カフェインなどがあり、これらの成分のバランスによって緑茶の味わいに違いが生まれます。
アミノ酸
茶葉に含まれる旨味成分で、アスパラギン酸やグルタミン酸、セリン、アルギリンなど数十種類のアミノ酸が含まれています。茶葉を乾燥させる火入れの工程で生まれる火香と呼ばれる緑茶の香ばしい香りは、アミノ酸と糖によって作り出されます。
テアニン
テアニンはアミノ酸の一種で茶葉に含まれるアミノ酸の内、40~60%はテアニンと言われ、茶の木の他にツバキなどの一部の植物で発見された甘味成分です。 テアニンは根で生成された後、葉に備蓄され日光が当たるとカテキンに変化します。玉露や碾茶(抹茶の原料)を作る場合には収穫前に2週間程度日光を遮り、テアニンなどのアミノ酸を増加させた茶葉が用いられます。
70°以下の温度ではカテキンやカフェインよりも水に溶けやすい性質があります。
カテキン
カテキンは根で生成されたテアニンが日光に当たることによって変化することで生成される渋味成分です。茶葉に含まれる主なカテキンは、エステル型カテキンと遊離型カテキンの2種類があり、エステル型カテキンにはエピガロカテキンガレート・エピカテキンガレートがあり、遊離型カテキンにはエピガロカテキン・エピカテキンがあります。
緑茶の渋味はエステル型カテキンによるもので、水の温度が低くなると水に溶け出しにくくなる性質があり、90°のお湯で2分間抽出した場合には茶葉に含まれるエステル型カテキンの約25%が水に溶け出し、70°で抽出した場合には約20%が溶け出すと言われています。
カフェイン
カフェインの含まれる飲み物というとコーヒーを思い浮かべる方も多いかと思いますが、緑茶にも多くのカフェインが含まれており、茶葉の3~4%を占める苦味のもとになる成分です。
カフェインは水の温度が低くなると水に溶け出す早さが緩やかになる性質があり、90°のお湯で2分間抽出した場合、茶葉に含まれるカフェインの内80%以上が水に溶け出し、70°では約50%が溶け出すとされています。
新茶の味の特徴
新茶の味の特徴は緑茶の持つ旨味に加え、少ない渋味とほのかに感じられる甘味にあります。新茶と番茶では特に渋味と甘味に関わる成分の量が異なるため、味に違いが生まれます。
新茶と番茶の成分の違い
新茶にはテアニンが多い
茶葉に含まれるテアニンの量は、一番茶(新茶)、二番茶、三番茶と収穫するシーズンが遅くなるほど少なくなっていき、一番茶に最も多く含まれます。そのため新茶から作られる緑茶は最も甘味を感じられるお茶になります。
新茶はカテキンが少ない
カテキンは前述の通りテアニンが日光に当たることで生成される成分で、茶葉が成長するにつれ量が増加していくため、番茶に多く含まれるカテキンの方が多くなり、新茶では少なくなります。番茶に比べ新茶の渋味が少ないのはこのような理由によるものです。
新茶の味を引き立てる淹れ方
お湯で淹れる
茶葉に含まれるカフェインやカテキンは、水の温度が低くなるにつれ溶け出しにくくなります。一方でアミノ酸はカフェインやカテキンと比べ低い温度でも水に溶けやすいことから、ぬるめのお湯で淹れたお茶は、苦味や渋味成分が少なくなり、旨味や甘味をより感じられるお茶になります。
新茶の持つ旨味や甘味をより強く感じることができるお茶を淹れたい場合には、お湯を少し冷まして65~70℃程度に調整しましょう。
水出しで淹れる
ぬるめのお湯で淹れる方法の他、水出しにすることでも水に溶け出すカテキンを少なくすることができるため、渋味が少なく旨味や甘味をより感じることができるお茶を淹れることができます。水出しする場合は水1Lに対し、茶葉は10g用意し半日ほど冷蔵庫で冷やしながらゆっくりと抽出します。
まとめ
・新茶は番茶に比べ渋味・苦味が少なく、旨味とほのかな甘味がある。
・新茶は番茶に比べ茶葉に含まれるテアニンの量が多くカテキンが少ない。
・お茶を淹れる温度を低くすることで、渋味・苦味をより少なくすることができる。
新茶と他のお茶の味が違う理由について解説しましたが、味だけではなく新茶には若葉の持つ爽やかな香りがあり、これらが組み合わせることで新茶特有の風味を生み出しています。「新茶」と一括りにしてご紹介してきましたが、生産された地域や製造業者によってその味わいは大きく異なりますので、色々な新茶を試してみるのも良いのではないでしょうか。
参考
茶主要成分の茶浸出液の溶出特性 独立行政法人農業技術研究機構 野菜茶業研究所
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cha1953/2001/91/2001_91_29/_article/-char/ja/
Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/