愛知県西尾市周辺は、抹茶の産地として知られており、日本で生産されている抹茶の約20%を生産しています。
また、全国茶品評会でも抹茶で産地賞を受賞するなど、全国的に品質が評価されており知名度も高いため、どのようなお茶なのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、西尾茶の歴史や特徴について解説していますので、ぜひご覧ください。
西尾茶とは?
まずは、西尾茶がどのようなお茶なのかを解説していきます。
特許庁認定の抹茶ブランド
2009年に西尾市周辺で生産された抹茶が「西尾の抹茶」として、特許庁の地域ブランドの認定を受けました。
西尾市周辺で生産された抹茶の付加価値を高めるために、西尾市茶業協同組合が特許庁に申請を行い、抹茶に限定した地域ブランドとしては全国でも始めての認定でした。
西尾の抹茶とは、「愛知県西尾市、安城市、幡豆郡吉良凋で生産された茶葉を同地域において碾茶加工・仕上げ精製し、茶臼挽きした抹茶」(出典:西尾市 西尾の抹茶・お茶)と定義されています。
地理的表示(GI)保護制度に認定
地理的表示(GI)保護制度とは、伝統的な生産方法や生産地の気候などの特性と、品質の結びつきが強い産品の名称を、知的財産として登録して保護する農林水産省の認定制度です。
意外なことに、三大銘茶である宇治茶、静岡茶、狭山茶はGI未登録で、お茶のGIはこれまで、福岡県の「八女伝統本玉露」のみでしたが、2017年に西尾の抹茶もこのGIに登録され、さらなるブランド化が図られています。
歴史
西尾茶の歴史は古く1200年代にまでさかのぼります。
1271年 |
吉良満氏が実相寺を創建 聖一国師が境内でお茶を栽培 |
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1872年 | 足立順道が京都宇治から種を取り寄せ茶園を開く |
1879年 | 知多郡から茶師を招き本格的なお茶の生産が始まる |
このように西尾茶には700年以上の歴史があり、古くからお茶の栽培が行われていました。
1960年代には、他の産地の台頭を受けて、一時衰退の危機にありましたが、食品加工用の抹茶を生産することで、再び主要な産地として復活しました。
食品加工用の抹茶においては、現在でも全国トップクラスの生産量を誇ります。
産地
先にご紹介した通り、西尾の抹茶の生産地は、西尾市、安城市、幡豆郡吉良凋です。
これらの地域は、水はけのよい土壌と適度な湿度から、抹茶の栽培に適しており、2013年の西尾市の抹茶の生産量は400tで、全国で生産される抹茶(2,243t)の約20%を占めています。(出典:西尾市 西尾の抹茶・お茶)
また、愛知県全体の抹茶の生産量は479tで、愛知県内の抹茶のほとんどが西尾市で生産されていることが分かります。
新茶の時期
西尾茶の新茶の時期は、年によって前後するものの、おおむね5月上旬から6月上旬頃です。
抹茶の栽培では、茶葉を収穫する前に一定期間、寒冷紗という被覆材で茶園を覆い、日光遮って栽培しますが、西尾市周辺では、例年4月の上旬ごろから寒冷紗が被せられ、一帯の茶園が緑から黒に変わります。
新茶の収穫から1ヵ月程で、その年の新茶がお店に並び始めますが、人気の高い銘柄は予約をしなければ入手できないこともあります。
西尾茶の特徴
西尾茶には、「棚式覆下栽培」と「濃厚なコクと旨味」という2つの特徴があります。
ここではそれら2つの特徴について詳しく解説していきます。
棚式覆下栽培
先にご紹介したように、抹茶は茶葉を収穫する2週間ほど前から、茶園を寒冷紗で覆い日光を遮って栽培されます。
この栽培方法のことを「覆下栽培(おおいしたさいばい)」と呼び、日光を遮ることで茶葉に含まれるクロロフィルが増加して、色鮮やか抹茶になります。
他の抹茶の産地でも覆下栽培は行われていますが、西尾市周辺では棚を立てて茶園全体を覆う伝統的な「棚式覆下栽培」で栽培されているのが特徴です。
濃厚なコクと旨味
茶葉の旨味、甘味はテアニンという成分によるもので、テアニンは日光に当たるとカテキンへと変化します。
カテキンは渋味成分で、 日光にあたる期間が長いほどその量も多くなり、新茶よりも番茶に多く含まれる成分です。
覆下栽培によって、テアニンが多くカテキンが少ない茶葉が育つため、渋味が少なく旨味を強く感じられる茶葉が育ちます。
こういった理由から、西尾茶はコクと旨味が濃厚なお茶になるのです。
西尾茶の種類
西尾茶といえば抹茶のイメージが強いですか、西尾市周辺では煎茶も生産されています。
ここでは、西尾周辺で生産されている茶種について解説していきます。
抹茶
抹茶は、碾茶(てんちゃ)を臼で挽いて粉末にしたお茶です。
すでにご紹介したように、覆下栽培を行うのが特徴ですが、栽培方法以外にも一般的な緑茶とは異なる点があります。
煎茶や玉露などの緑茶は茶葉を蒸した後、揉みながら乾燥させますが、碾茶の製造では茶葉を揉みません。
【抹茶の製造工程】
- 熱蒸
- 冷却
- 荒乾燥
- 本乾燥
- つる切り
- 再乾燥
- 合組
- 乾燥
- 臼挽き
- ふるい掛け
1から7までの工程が碾茶の製造工程、8以降の工程が抹茶の製造工程で、碾茶の製造では茶葉を蒸した後、撹拌しながら冷却してそのまま乾燥させます。
碾茶の状態で保管した方が、お茶の風味が失われにくいため出荷直前に抹茶に加工されます。
抹茶というと渋いお茶といったイメージを抱いている方もいるかもしれませんが、すでに解説したように、実際には渋味が少なく、ほのかな甘味があります。
煎茶
煎茶は抹茶とは異なり、茶葉を蒸した後、揉みながら乾燥させて作られます。
日本茶の中では最も一般的な製造法で作られており、玉露や番茶、かぶせ茶なども基本的に同じ方法で製造されています。
【煎茶の製造工程】
- 熱蒸
- 冷却
- 葉打ち
- 粗揉
- 揉捻
- 中揉
- 精揉
- 乾燥
- 選別
- 整形
- 火入れ
- 合組
煎茶は、浅蒸しと深蒸しに分けることができ、時間が短いものを浅蒸し、長いものを深蒸し呼びます。
また、浅蒸しで作られた煎茶は普通蒸し茶、深蒸しで作られた煎茶は深蒸し茶と呼ばれ、旨味と渋味の程よいバランスと、爽やかな香りが煎茶の特徴です。
西尾茶の入れ方
ここからは、西尾茶をより美味しく飲むための入れ方をご紹介していきます。
抹茶
抹茶を点てるとなると、少し敷居が高いように感じるかもしれませんが、いくつかポイントを押さえることで、おいしい抹茶を点てることができます。
抹茶を点てる前に、抹茶を茶ごしでふるってダマをなくしておき、茶せんはお湯につけて柔らかくおきましょう。
分量
- 抹茶 1.5g
- お湯 70ml
抹茶の点て方
- 茶碗に抹茶と少量のお湯を入れて溶く
- 残りのお湯を茶碗に入れて、底に触れないように茶せんを前後に小刻みに動かす
- 泡立ってきたら表面付近の大きな泡をつぶして整える
煎茶
煎茶は、同じ茶葉で3回程入れることができますが、味が出にくくなっていきますので、お湯の温度を徐々に高くして入れましょう。
分量
- 煎茶 2g(1人分)
- お湯 80ml(1人分)
煎茶の入れ方
- 茶葉を急須に入れる
- お湯を茶碗に注いて茶碗を温める
- 茶碗のお湯を急須に注ぐ
- 30秒ほど浸出
- お茶の濃さが均等になるように少しずつ廻し注ぎする
- 2煎目、3煎目はポットから直接急須にお湯を注ぐ
煎茶を注ぐ際には必ず最後の一滴まで注ぎきるようにしましょう。
そうすることで、2煎目、3煎目が渋くなることを防ぐことができます。
まとめ
- 西尾の抹茶は、愛知県西尾市、安城市、幡豆郡吉良凋で栽培された茶葉を、同地域で仕上げ加工した抹茶
- 西尾茶の新茶の時期は、5月上旬から6月上旬頃
- 伝統的な棚式覆下栽培で栽培されている
- 濃厚な旨味とコクが特徴
西尾茶の歴史や特徴についてご紹介しました。
ご紹介したように西尾茶は抹茶が有名なので、抹茶好きの方は一度試してみてはいかがでしょうか。
抹茶についてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事もぜひご覧ください。