伊勢茶(いせちゃ)は三重県で生産されたお茶のことで、かぶせ茶の生産が盛んなことで知られています。
最近では、伊勢茶のブランド化が図られており、メディアに取り上げられることも増えてきたため、どのようなお茶なのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、伊勢茶の種類や産地ごとの特徴について解説していきますので、ぜひご覧ください。
伊勢茶とは?
伊勢茶とは、三重県内で生産された茶葉100%で作られたお茶のことを指します。
一口に伊勢茶と言っても、生産された地域やお茶の種類によってその特徴もさまざまです。
まずは、伊勢茶がどのようなお茶なのかを解説していきます。
生産量が全国3位
伊勢茶の産地である三重県は、お茶の生産量が全国で3番目に多い県です。
【緑茶の生産量】
- 静岡県 33,400t
- 鹿児島県 28,100t
- 三重県 6,274t
(出典:全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連絡協議会 茶ガイド 種類別の主な茶産地)
静岡県、鹿児島県に次ぐ生産量で、お茶の栽培面積でも全国3位になっており、国内のお茶の三大産地のひとつになっています。
中でもかぶせ茶の生産量は全国1位を誇り、三重県内で生産されるお茶の約30%がかぶせ茶です。
【かぶせ茶の生産量】
- 三重県 2,761t
- 奈良県 260t
- 静岡県 240t
(出典:全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連絡協議会 茶ガイド 種類別の主な茶産地)
かぶせ茶の生産量が2番目に多い奈良県と比較してみても、三重県のかぶせ茶の生産量は約10倍と圧倒的に多く、全国で生産されるかぶせ茶の約70%が三重県で作られています。
主な産地
伊勢茶の産地は、大きく分けて「北勢」と「南勢」の2つの地域に分けられ、その地の気候に合わせたお茶が生産されています。
ここでは、それぞれの産地の特徴について解説します。
北勢
三重県の中でも特にお茶の生産が盛んなのが北勢地域で、鈴鹿山脈の麓を中心に煎茶やかぶせ茶が生産されています。
北勢地域の主な産地は、鈴鹿、四日市、亀山、水沢などの地域で、古くからお茶の産地として知られていました。
水沢では鈴鹿山脈と伊勢湾に挟まれた地形を活かして、かぶせ茶の生産が盛んに行われています。
鈴鹿や四日市、亀山では煎茶の生産が盛んです。
南勢
南勢地域では、台高山脈周辺で煎茶や深蒸し茶の生産が行われています。
南勢地域の主な産地は、 大台、飯高、飯南といった地域で、大台では煎茶が盛んに生産されています。
一方、飯高や飯南では深蒸し茶の生産が盛んです。
歴史
900年頃には四日市市の浄林寺でお茶の木が栽培されていたとする記録が残っており、三重県では古くからお茶が栽培されていたことがうかがえます。
1800年代初頭に常願寺の中川教宏という住職がお茶の栽培を進めたことで、三重県で本格的にお茶が栽培されるようになったと言われています。
幕末に入り鎖国政策が廃止されると、お茶が盛んに輸出されるようになり、三重県は輸出用のお茶の生産地として重要な役割を担うようになりました。(出典:三重県 伊勢茶の振興)
2000年代に入ると、伊勢茶のブランド化が進められるようになり現在に至ります。
旬の時期
伊勢茶の旬は4月中旬から5月上旬にかけての時期です。
お茶の葉は年に3から4回程収穫することができますが、その中でも、その年の1番最初に収穫したお茶のことを新茶(1番茶)と呼び、その後の時期に収穫されたお茶をまとめて番茶と呼びます。
お茶にとっての旬とは、この新茶を収穫する時期のことで、伊勢茶の産地では4月中旬から5月上旬にかけて新茶の収穫が行われます。
製造業者にもよりますが、収穫後、約1か月ぐらい経つと新茶が店頭に並び始めます。
伊勢茶の種類
伊勢茶の産地ではかぶせ茶や煎茶、深蒸し茶が盛んに生産されていることは先にご紹介したとおりですが、それぞれのお茶の違いについて解説していきます。
かぶせ茶
かぶせ茶は、収穫前に被覆材をお茶の木にかぶせて日光を遮って栽培したお茶のことです。
茶葉にはテアニンという成分が含まれており、テアニンは日光に当たることでカテキンへと変化します。
テアニンは甘味・旨味成分、カテキンは渋味成分であるため、日光を遮ることで旨味が強く渋味の少ないお茶になります。
玉露も同じように日光を遮って栽培されますが、かぶせ茶の被覆期間が2週間程であるのに対し、玉露は20日程と被覆する期間に違いがあります。
そのため、かぶせ茶は煎茶のような渋味を残しつつ、玉露のような旨味や覆い香を感じることができ、玉露と煎茶の中間のような味わいになります。
煎茶
煎茶は日本茶の中で最も盛んに生産されており、日本人にとって馴染み深いお茶と言えます。
煎茶は蒸気で茶葉に熱を加えたあと、茶葉を揉みながら乾燥させて作ります。
お茶の葉は収穫後、発酵が進むにつれて徐々に甘い香りに変化していきますが、煎茶を含む緑茶は茶葉を蒸して発酵を止めるため、茶葉本来の香りを残すことができます。
玉露やかぶせ茶のように被覆いは行わないため、煎茶には適度な渋味があります。
旨味、渋味のバランスの良さと茶葉本来の爽やかな香りが煎茶の特徴です。
深蒸し茶
深蒸し茶の製造方法は、煎茶とほとんど同じですが、茶葉を蒸す時間が異なります。
深蒸しとは、茶葉を長く蒸すことを意味しており、深蒸しにすることで茶葉が軟らかくなります。
煎茶と比較すると粉状の茶葉が多くなるため、味が溶け出しやすく濃厚な味わいになるのが深蒸し茶の特徴です。
ほうじ茶
三重県ではほうじ茶も生産されています。
ほうじ茶は、煎茶や番茶を焙じた(焙煎)二次加工品に分類されるお茶で、高温で炒ることで香ばしい香りとさっぱりとした味わいになります。
また、高温で加熱することでカフェインも少なくなるため、刺激の少ないお茶として注目されています。
伊勢茶の特徴
伊勢茶には「葉が厚い」「濃厚な味わい」といった特徴があります。
ここからは、それら2つの特徴について詳しく解説していきます。
葉が厚い
伊勢茶の特徴のひとつは茶葉の厚さにあります。
お茶の栽培に適した気候のおかげで茶葉の生育が良く、ほかの産地と比較すると茶葉が肉厚に育つ傾向にあると言われています。
煎茶や深蒸し茶などの煎じて飲むタイプのお茶は、同じ茶葉で数回お茶を入れることができますが、回数を重ねるにつれて徐々に味が出にくくなっていきます。
伊勢茶は茶葉が厚いため、3煎目でも味が薄くなりにくいと言われています。
濃厚な味わい
伊勢茶は茶葉が厚いことご紹介しましたが、これにより伊勢茶はほかの産地のお茶と比較すると、味が濃くなる傾向にあると言われています。
伊勢茶は、全国茶品評会で何度も賞を受賞しており、濃厚でコクのある味わいが全国的に評価されていることがうかがえます。
伊勢茶の入れ方
三重県で生産が盛んなかぶせ茶とほうじ茶の入れ方について解説していきます。
かぶせ茶
かぶせ茶は、玉露と煎茶の中間の味わいのお茶であるため、玉露の入れ方、煎茶の入れ方の両方で入れることができます。
玉露の入れ方で入れると玉露寄りの味わいになり、煎茶の入れ方で入れると煎茶寄りの味わいになります。
ここでは、最も基本的な煎茶と同じように入れる方法を解説します。
分量(3人分)
- かぶせ茶 6g
- お湯 240ml
入れ方
- お湯を急須に注ぐ
- 急須のお湯を茶碗に注ぎ、余ったお湯は捨てる
- 用意したかぶせ茶を急須に入れる(こうすることでお茶の温度を下げつつ、茶碗を温めることができる)
- 茶碗のお湯を急須に戻して90秒ほど浸出させる
- 少しづつ廻し注ぎする
急須にお湯が残っていると、2煎目、3煎目を入れた時に渋味がでてしまうため、必ず最後の一滴まで注ぐようにしましょう。
ほうじ茶
ほうじ茶は、熱湯で入れることで香りが立ちやすくなります。
ここでは、ほうじ茶の香りをより愉しむことができる入れ方をご紹介します。
分量(3人分)
- ほうじ茶 6g
- 熱湯 300ml
入れ方
- 急須に用意したほうじ茶を入れる
- ポットややかんから、沸かしたお湯を直接急須に注ぐ
- 30秒ほど浸出させる
- 廻し注ぎする
急須に沸かしたお湯を直接注ぐとお湯の温度が下がらず、ほうじ茶の香りが立ちやすくなります。
まとめ
- 伊勢茶とは、三重県内で生産された茶葉100%で作られたお茶
- 伊勢茶の旬は4月中旬から5月上旬
- 南勢では煎茶やかぶせ茶、北勢では煎茶や深蒸し茶の生産が多い
- 伊勢茶の特徴は、厚い茶葉と濃厚な味わい
伊勢茶の種類や特徴について解説しました。
ご紹介した通り、三重県ではかぶせ茶の生産が盛んなので、伊勢茶をまだ飲んだことがないという方は、かぶせ茶から試してみてみるとよいでしょう。
かぶせ茶についてもっと知りたい方は下記の記事もご覧ください。