皆さん、こんにちは!
今回は抹茶についての主な産地の特徴や、味を決めるポイントについて解説していきたいと思います。
最近はコンビニをはじめ様々な場所で抹茶を使った食品が販売され、抹茶が身近なものになってきました。
一方で使われている抹茶について「どこの産地のものなのだろう?」気になったことはないでしょうか?
抹茶の産地として有名なのは京都の宇治ですが、その他にも国内には多くの産地があります。
この記事を読むと、抹茶の産地や味を決めるポイントについての理解が深まり、これまでよりも抹茶を楽しめるようになりますよ!
抹茶の産地ランキング
まずは、国内の抹茶の産地と生産量をランキング形式で紹介していきます。
どの都道府県が上位に上がってくるでしょうか!
抹茶(碾茶)の生産量ランキング
- 京都府 …1,181(t)
- 鹿児島県 …578(t)
- 愛知県 …545(t)
- 静岡県 …510(t)
- 奈良県 …190(t)
- 福岡県 …140(t)
- 三重県 …136(t)
- 岐阜県 …65(t)
- 滋賀県 …25(t)
- 島根県 …13(t)
(出典:全国茶生産団体連合会・全国茶主府県農協連連絡協議会 茶ガイド 種類別主な茶産地)
全国計だと3,387(t)の生産量があり、ランキングの上位4府県だけで全体の8割以上が生産されています。
生産が盛んなところと少ないところで生産量にひらきがあり、北陸地方や北日本など、寒い地域での抹茶の生産はほぼないことが分かりますね。
全国茶品評会の産地賞ランキング
2019年に行われた全国茶品評会では、 埼玉県・静岡県・愛知県・京都府・奈良県・福岡県・鹿児島県などの都道府県から、137点の碾茶(てんちゃ)が出品されました。
産地賞はお茶の種類ごとに、品質の優れている地域が受賞する賞で、碾茶部門の上位3つの地域は以下の通りとなっています。
- 京都府宇治市
- 愛知県西尾市
- 京都府城陽市
(出典:愛知県 第73回全国茶品評会審査結果)
上位の地域は鮮やかな色と上品な香味が評価されたようです。
抹茶と言えば京都というイメージの通り、品評会の結果をみても京都府は名実ともに上質な抹茶の産地であることが分かりますね。
抹茶の主な産地
次に、主な抹茶の原料である 碾茶の生産量が多かった4府県について、特徴や違いなどを踏まえて 解説していきます。
京都府
抹茶の産地として、まず頭に浮かぶのが京都府の「宇治市」ではないでしょうか。
もともと宇治で作られるお茶は「宇治茶」と呼ばれ、手もみで作る煎茶の製法を開発するなど日本のお茶文化をけん引してきました。
また、京都の南部に位置する宇治市ですが、現在では碾茶や玉露の生産が盛んで、鎌倉時代からお茶づくりが続く歴史あるお茶の産地です。
鎌倉時代に伝わったとされている宇治抹茶は、渋みが少なくまろやかな味が特徴です。
かの有名な千利休が茶道で取り入れたことにより、さらに多くの人も楽しめるようになりました。
愛知県
続いては愛知県の西尾市です。先ほどの産地賞ランキングでも2位に入っていましたね。
実はこの西尾市は全国で初めて抹茶に特化した地域ブランドを持つなど、抹茶づくりに特に注力しており、毎年品評会でも常連です。
茶畑は市全体で200ヘクタールにも及び、市北西部の矢作川左岸一帯にある稲荷山茶園が特に有名です。
矢作川流域は、適度な水分と水はけの良い砂混じりの土壌から、碾茶に理想的なつやのある茶葉を栽培するのに適していると言われています。
静岡県
静岡県はお茶に関しては、オールラウンダーと言ってよいでしょう。
県内のほぼ全域でお茶が栽培され、煎茶、深蒸し茶、玉露、そして碾茶など各土地の自然環境に合わせていろんな種類のお茶を全国的にも多く生産しています。
また、抹茶の歴史は京都と同じように古く、江戸時代の初めには碾茶が作られ、徳川家康などもお茶会の席で地元の抹茶を使っていたそうです。
政治的理由で一時的に衰退していましたが、 日照時間が長い温暖な気候のもと、「朝比奈」地域を起点に抹茶づくりが復興され、今では立派な静岡茶のひとつになっています。
鹿児島県
鹿児島県は、碾茶を含め良質なお茶を低コストで大量に生産できる大規模な機械化生産方式が特徴の産地です。
機械化に向く平坦な茶園が多いため、お茶栽培における機械の普及率は全国1位です。
現在のような機械化が始まったのは第二次大戦後で、比較的新しい産地なのですが、静岡県に次ぐ全国2位の生産量を誇ります。
また、温暖な気候を生かして、様々な品種をバランスよく栽培することで、1年を通して安定した生産量を確保できるのも鹿児島県の利点です。
品種によって様々なお茶の味を楽しめるのも鹿児島茶の特徴と言えるでしょう。
そもそも抹茶ってどんなお茶?
ここからは原料である碾茶が粉末状の抹茶になるまで、どのように作られるのか、もとになる碾茶の製造工程について説明していきます。
碾茶から作られる
碾茶の「碾」は挽く行為を表していて、「粉砕するためのお茶」という意味があります。
この碾茶を石臼や微粉砕機などで挽いて粉末状にしたものが抹茶です。
茶葉を揉まずに乾燥させるのが碾茶の特徴で、被覆(日光を遮ること)して栽培したものとしないものがあり、それぞれ品質に違いがあります。
被覆したものは独特の香味があり主に茶道のお点前用などに用いられます。
被覆しないものは適度な渋みがあり、色合いや味のアクセントとして お菓子の原料やアイスクリームなどに使われたりしています。
碾茶の作り方
碾茶は煎茶のような「揉む」工程がないため、煎茶と比較すると製造にかかる時間が短くなります。
- 生葉を摘採する前に茶園全体を寒冷紗などで覆って遮光します。
- 摘採した生葉は放置すると熱をもち発酵してしまうため送風・加湿によって適度な水分を保ちます。
- 茶葉を蒸します。
- 蒸した後の茶葉は放置すると熱を持ち、色・香味とも悪くなってしまうので重ならないよう攪拌させながら冷却します。
- 乾燥機でゆっくりと乾燥させます。
- つる切りと再乾燥の後、均一にブレンドして袋に詰めて出来上がりです。
より詳しく知りたい方は下記の関連記事をご覧ください。
抹茶の味に違いが出る理由
品種・産地・収穫方法・挽き方などの違いで抹茶の味は変化します。
ここからはそれらの違いが味にどのように関係するのか詳しく解説していきます。
品種の違い
お茶の木は多くの品種があり、品種ごとの味や香りに個性があります。
多くの抹茶は、香りや味・色のバランスがとれるよう種類の違う茶葉をブレンドして作られます。
抹茶に使用される代表的な品種は以下の通りです。
さみどり
手摘みの碾茶では最も多く栽培されている品種で、抹茶にしたときの色の良さが特徴です。
晩生(おくて)で成長が遅く生産性は低いですが、抹茶用の茶葉として優れているため、多くの茶園で栽培されています。
あさひ
碾茶品種の中で、現在最も高値で取引されている品種が「あさひ」です。
早生で摘採時期が短いため、時期を逃すとすぐに品質が低下してしまいます。
そのため、栽培する面積を増やすことも難しく、希少価値も影響して価格が高くなっています。
やぶきた
やぶきたは、全国で最も多く育てられている品種で、ハサミ刈り(機械で摘採)用の碾茶として多く栽培されています。
もともと葉の色が黄色みを帯びているため、抹茶用としてはやや発色が悪い傾向にあります。
おくみどり
葉緑素の含有量が多く、挽いた後の色が良いため特に2番茶の「おくみどり」は人気があります。
ただ味は渋みがやや多いため、茶道のお点前用には適さず、食品や加工用の抹茶として需要が高いです。
産地の違い
ワインの味わいを思い浮かべてみてください。
品種が同じでも産地によって味が違うことがありますよね?
お茶も全く同じで 産地の土壌や気候によって味わいが変わります。
例えば、赤土か?黒土か?
粘土質な赤土で水はけの良くない場所では渋みが強いお茶が、養分が豊富な黒土では深みのある味のお茶ができやすい傾向があります。
このように様々な条件の違いで味わいにも個性がでてきます。
また、近年では京都府や愛知県西尾市以外の各産地で加工技術や栽培方法が向上してきており、産地による品質の差は小さくなってきています。
収穫方法の違い
収穫方法は、人の手で新芽のみを丁寧に摘んでいく「手摘み」と、お茶刈りバサミという刃物を使用するハサミ刈り(現在ではバリカンのようなカーブしたハサミを持つ機械を使う刈り方)の2つがあります。
ハサミ刈りでは新芽のみを綺麗に刈り取るために、茶園を定期的に刈り込み形をバームクーヘンのように整えることで古い葉と新芽に分けます。
メリットとして手摘みに比べて摘採にかかる人件費が安く、時間も短く済みます。
しかし、デメリットとして茶園の形を変えることで肥料や遮光に限界を作ってしまったり、一部品質の悪い古い葉が混ざってしまうこともあります。
手摘みは熟練された茶摘みさんの「手だけ」で摘み取るため、美味しい新芽だけを厳選して収穫でき、より高い品質の抹茶を作ることができる点が手摘みのメリットと言えます。
人の手で摘採する分、時間がかかるため人件費が高くなってしまうのが手摘みのデメリットです。
挽き方の違い
抹茶専用ミルなど、機械で碾茶を挽く場合、短時間で大量に抹茶を作ることができますが、石臼で挽いた場合と比較すると粒がそろわない上に、摩擦熱で香りや風味が飛んでしまう傾向にあります。
石臼で挽くと時間はかかりますが、重さによってまんべんなく挽くことができます。
粒がそろいやすく摩擦熱も発生しにくいため、風味が飛びにくいという利点があります。
食塩一粒の大きさは400ミクロン、小麦粉・片栗粉が20から70ミクロン位ですが、抹茶は挽いて10ミクロン、上質なものでは5ミクロンにもなります。
より細かくすることで抹茶を点てた時の滑らかな泡や深い味わい、鮮やかな色味が楽しめます。
また、粒の大きさにムラがあるとなかなか均一な味わいになりません。
まとめ
各産地の特徴や抹茶の味を決めるポイントについて紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
近年では様々なところで碾茶が作られ、品質も向上してきていますが、同時に美味しい抹茶を作るために工夫し、地域ブランドを立ち上げるなど栽培以外のところにも力を入れる産地も増えてきました。
産地の違いや品種の違い、挽き方の違いなど知ることで、これまでとは抹茶の楽しみ方も少し違ってくるではないでしょうか。
私もいつもは抹茶ラテや抹茶ケーキなどコンビニなどで何気なく買っていましたが、次回からは商品ラベルや生産者さんの名前、産地の分かるものも試してみようと思いました。
皆さんも是非いろいろな種類の抹茶に触れていただき、味や風味の違いを楽しんでいただければ幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。