宮崎県はお茶の生産量が全国で4番目に多い県で、県内で生産されるお茶を総称して「みやざき茶」と呼びます。
全国茶品評会では、宮崎県の釜炒り茶が1位に選ばれたこともあるため、みやざき茶がどのようなお茶なのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、みやざき茶の特徴や産地などについて、詳しく解説していきますので、ぜひご覧ください。
みやざき茶とは?
まずは、みやざき茶がどのようなお茶なのかを理解するために、宮崎のお茶の産地や歴史について解説していきます。
生産量が全国4位
宮崎県は全国で4番目にお茶の生産量が多い県です。
【全国の緑茶の生産量】
- 静岡県 33,400t
- 鹿児島県 28,100t
- 三重県 6,274t
- 京都府 2,939t
- 宮崎県 2,749t
(出典:全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連絡協議会 茶ガイド 種類別の主な茶産地)
また、釜炒り茶の生産量は佐賀県に次いで2番目に多くなっています。
【釜炒り茶の生産量】
- 佐賀県 111t
- 宮崎県 101t
- 大分県 40t
- 熊本県 21t
(出典:全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連絡協議会 茶ガイド 種類別の主な茶産地)
このように宮崎県は、全国でも有数の生産量を誇るお茶の生産地で、生産されるお茶の約80%が煎茶、6%が釜炒り茶に加工されます。
産地
宮崎県は温暖な気候と適度な降水量から、お茶の栽培に適しており、県内の至るところでお茶が生産されています。
中でも特に生産量が多いのが、串間市や都城市のある南部と、川南町のある県中央の沿岸部です。
【市町村別お茶の生産量】
- 川南町 437t
- 串間市 343t
- 都城市 330t
- 宮崎市 260t
- 西都市 221t
(出典:みやざき茶 県内生産地 平成18年度市町村別茶業統計)
南部や沿岸部では主に煎茶が生産されていますが、北部の高千穂町や五ヶ瀬町などの山間部では、釜炒り茶が盛んに生産されています。
新茶の時期
みやざき茶の新茶の時期は、おおむね4月中旬から5月上旬頃の時期です。
串間市や都城市などの平野部の産地は、比較的早い時期に新茶の収穫が始まりますが、高千穂や五ヶ瀬などの山間部の産地は、平野部と比べるとやや遅くなる傾向にあります。
歴史
みやざき茶の歴史は古く、1600年頃にはお茶を貢物や税として納めていたという記録が残っています。
宮崎県では煎茶の他にも釜炒り茶の生産が行われていますが、それぞれの起源は異なっており、釜炒り製法は1600年頃に朝鮮から伝わったと言われています。
一方、煎茶の製法は、1751年に都城島津藩家士が宇治で学んだ煎茶の製法を、広めたのが始まりとされています。
明治時代に入ると生産量が徐々に伸び、昭和初期には茶業の機械化が進んでいきました。
平成になると茶園の大規模化が進み、先にご紹介した通り、国内で4番目に生産量が多いお茶の生産地へと成長し現在に至ります。
みやざき茶の特徴
みやざき茶の特徴は、やぶきた以外の品種の生産量が多いことと、しっかりとした旨味があることです。
ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
やぶきた以外の生産量が多い
全国で生産されているお茶の約70%は「やぶきた」という品種ですが、 宮崎県はやぶきたよりも、それ以外の品種の生産量が多いという特徴があります。
(出典:みやざき茶推進会議 県内生産品種 宮崎県の茶園の品種構成の推移)
2004年頃まではやぶきたの生産量が、他の品種の生産量を上回っていましたが、2008年頃からは、他の品種の生産量がやぶきたの生産量を上回るようになりました。
宮崎県では12種類の品種が、県の推奨品種として栽培が推進されており、他の産地と比較して品種のバリエーションが豊富になっています。
しっかりとした旨味
みやざき茶の約80%が、煎茶に加工されているということは先にご紹介したとおりですが、茶葉にアミノ酸が多く含まれているため、みやざき茶にはしっかりとした旨味があります。
また、他の産地と比較すると味がやや濃いとされています。
みやざき茶の品種
全国的に最も生産量が多いお茶の品種は「やぶきた」という品種です。
宮崎県では県の推奨品種として、以下の12種類の品種の栽培を推奨しています。
- やぶきた
- さえみどり
- さきみどり
- はるもえぎ
- ゆめかおり
- なごみゆたか
- みねかおり
- みなみさやか
- おくみどり
- はるなごり
- みやまかおり
- ふうしゅん
ここでは、いくつか代表的な品種について解説していきます。
やぶきた
「やぶきた」は、甘味と渋味のバランスがよく、煎茶用の茶葉として品質に優れているため、全国的に最も多く栽培されています。
静岡県の在来種の中から選抜された品種で、やぶを切り開いて作られた北側の茶園で栽培されていたことから、やぶきたと命名されたと言われています。
さえみどり
「さえみどり」は、「やぶきた」と「あさつゆ」という品種を交配して開発された品種です。
しっかりとした旨味と鮮やかな色が特徴で、高級茶によく用いられます。
全国茶品評会で入賞した銘柄の中にも、さえみどりを使用した銘柄があり、品質に優れている品種であることが分かります。
さきみどり
「さきみどり」は、「F1NN27」と「NE52」という品種を交配して作られた品種で、2001年に品種登録されました。
1番茶の色が鮮やかで後味がすっきりしている点が特徴です。
煎茶としての品質はやぶきたと同等とされていますが、やぶきたより病気に強いとされています。
みやまかおり
「みやまかおり」は、「京研283」と「埼玉1号」という品種を交配して作られました。
煎茶用の茶葉としての品質は、やぶきたと同等とされていますが、やぶきたよりも1番茶、2番茶の収穫量が多いのが特徴です。
みやざき茶の種類
宮崎県で生産量が最も多いのは煎茶ですが、先にご紹介した通り、釜炒り茶の生産も盛んです。
ここでは、みやざき茶の主な茶種についてご紹介していきます。
煎茶
煎茶は、緑茶の中でも最も標準的な方法で製造されるお茶です。
収穫した茶葉を放っておくと、酸化酵素の働きによって発酵が進んでいきます。
煎茶は茶葉を高温の蒸気で蒸して、酸化酵素の働きを止めることで茶葉を発酵させない不発酵茶です。
茶葉を蒸す時間によって、浅蒸し煎茶と深蒸し煎茶に分けることができますが、宮崎県では蒸し時間が長い深蒸し煎茶の生産が盛んです。
釜炒り茶
宮崎県では、釜炒り茶の生産も盛んです。
釜炒り茶は、中国式の釜炒り製法によって作られるお茶で、煎茶のように蒸気で熱を加えるのではなく、高温の釜で炒ることで茶葉の発酵止めています。
釜で炒ることで生まれる独特の香ばしい香りが釜炒り茶の特徴で、この香りは釜香(かまか)と呼ばれています。
また、煎茶の様に茶葉の形を整える工程がないため、茶葉が丸みを帯びた形をしているいことから、釜炒り製玉緑茶とも呼ばれています。
蒸し製玉緑茶
宮崎県では、蒸し製玉緑茶の生産も行われています。
蒸し製玉緑茶は、釜炒り茶同様に茶葉の形を整える工程がなく、茶葉が丸みを帯びた形をしていることから玉緑茶と呼ばれています。
釜炒り茶が、茶葉を釜で炒って発酵を止めているのに対し、蒸し製玉緑茶は煎茶のように蒸気で蒸して発酵を止めています。
釜炒り茶と比べると渋みが強いのが特徴です。
まとめ
- みやざき茶は、宮崎県内で生産されるお茶の総称
- 南部や沿岸部では深蒸し煎茶の生産が盛んで、北部では釜入り茶の生産が盛んに行われている
- 新茶の時期は、4月中旬から5月上旬
- やぶきた以外の品種の生産量が多い
- しっかりとした旨味がみやざき茶の特徴
全国第4位の生産量を誇る宮崎県のお茶について解説しました。
釜炒り茶の生産量は、煎茶と比べると少ないため、飲んだことがないという方もいるのではないでしょうか。
釜炒り茶についてもっと知りたい方は、下記の記事もぜひご覧ください。