八女茶(やめちゃ)とは、福岡県の八女市周辺で生産されるお茶のことです。
テレビでもたびたび取り上げられることがあるため、お茶好きの方であればどのようなお茶なのか気になっているのではないでしょうか。
この記事では、八女茶の特徴や旬の時期、美味しい入れ方についてご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
八女茶とは?
八女茶の産地や旬の時期など、八女茶がどのようなお茶なのかということについて解説していきます。
高品質な玉露を生産
緑茶の中でも特に高価なのが玉露で、八女茶は高品質な玉露の生産地として知られています。
福岡県は玉露の生産量が全国で2番目に多い都道府県で、国内の玉露の約25%を生産しています。(出典:全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連絡協議会 茶ガイド 種類別の主な茶産地)
また、生産量が多いだけではなく、全国茶品評会においてこれまでに10回以上も農林水産大臣賞を受賞しており、高品質な玉露の産地として確固たる地位を築いています。
主な産地
八女茶の主な産地は、福岡県八女市、筑後市、八女郡広川町で、玉露は主に山間部で生産されており、黒木町、上陽町、星野村で生産が盛んです。
八女市周辺では、降水量の多さや昼夜の寒暖差、お茶の栽培に適した土壌から、古来よりお茶の栽培が行われていました。
また、平野部ではこれまで普通煎茶の生産が主でしたが、最近では深蒸し茶の生産量が増加傾向にあります。
八女茶の歴史
八女茶の起源は、室町時代に栄林周瑞禅師が明からお茶の実を持ち帰り、栽培方法や釜炒り製法を伝えたのが始まりと言われています。
江戸時代に入り出島での貿易が始まると、九州産のお茶が輸出されるようになり、八女市周辺のお茶も国外に輸出されるようになりました。
しかし、当時のお茶の生産技術は未熟だったため、品質が問題となり明治時代には輸出がストップしました。
大正時代には、国内向けに生産されるようになり、八女市周辺で生産されていた「筑後茶」「笠原茶」「星野茶」を「八女茶」に統一して現在に至ります。
八女茶の旬は?
お茶の旬は新茶(1番茶)の時期で、新茶とはその年の1番最初に収穫される新芽から作られるお茶のことです。
八女茶の新茶は、4月下旬から5月上旬にかけて収穫が行われ、この時期が八女茶の旬ということになります。
2番茶は6月中旬から7月上旬、3番茶は7月下旬から8月上旬ごろに収穫されますが、2番茶以降のお茶は市場での評価が徐々に低くなっていきます。
八女茶の産地では茶葉の品質を重視する傾向にあるため、多くの茶園は2番茶までしか収穫を行いません。
八女茶の特徴
八女茶の特徴は、「芽重型の栽培」「伝統的な被覆」「甘味と旨味」にあります。
次はこれら3つの特徴について解説していきます。
芽重型の栽培
お茶の栽培では整枝(せいし)と言って、 次のシーズンでお茶を収穫する前に、古い葉や茎などが混入しないように、お茶の木の余計な枝を刈り取る処理を施します。
地域によって整枝の時期や回数は異なりますが、新茶を収穫した後や秋などに実施する地域が多いです。
整枝する深さによって芽の育ち方が変わり、深めに整枝すると芽の数は多くなりますが、一方で、ひとつひとつの芽は小さくなります。
浅めに整枝すると芽の数は少なくなりますが、ひとつひとつの芽が大きく育ちます。
芽の数を重視する栽培方法を「芽数型」、芽の大きさを重視する栽培方法を「芽重型」と呼び、芽重型の方が茶葉としての品質が高くなるため、八女茶の産地では芽重型で栽培されることが多いです。
伝統的な被覆
玉露用の栽培では、1番茶を収穫する20日ほど前から茶葉を被覆材で覆って、茶葉に当たる日光を遮ります。
伝統的な玉露の栽培では、被覆材としてわらを編んだ「こも」が使用されてきました。
近年では、化学繊維を使用した被覆材が使用されることが多いですが、八女の茶園の玉露栽培では、現在でもこもがよく使用され、伝統的な被覆材を使用した玉露の栽培が盛んに行われています。
甘味と旨味
甘味と濃厚な旨味が八女茶の特徴で、この味わいは先にご紹介した被覆によって生み出されます。
茶葉の甘味、旨味成分であるテアニンは、日光に当たることでカテキンに変化します。
茶葉に含まれるカテキンが多いほど渋みが強くなりますが、被覆材で日光を遮ることでテアニンが多く、カテキンが少ない茶葉が育ちます。
加えて、玉露が生産される山間部は、霧がかかりやすく日光が茶葉に当たる時間が平野部と比べて短いため、テアニンの多いお茶が育ちやすい条件に恵まれています。
このような理由から、渋味が少なくなり甘味や旨味を感じやすい茶葉になるため、八女茶は甘味と旨味が濃厚なお茶になるのです。
八女茶の種類
八女市周辺では玉露の栽培が盛んですが、玉露の以外のお茶も生産されています。
ここでは、八女茶の産地で生産されているほかの種類のお茶をご紹介します。
かぶせ茶
かぶせ茶(冠茶)は、玉露と同じように日光を遮って栽培される緑茶です。
玉露が遮光率100%の被覆材で、20日ほど被覆するのに対し、かぶせ茶は遮光率50%の被覆材で10日ほど被覆して栽培します。
そのため、まったく被覆せずに栽培される上級煎茶と玉露の中間の味わいになります。
福岡県はかぶせ茶の生産量が全国で3番目に多く、八女周辺でも盛んに生産されており、国内有数のかぶせ茶の産地になっています。(出典:全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連絡協議会 茶ガイド 種類別の主な茶産地)
白折
お茶の製造では、仕上げの工程で葉(本茶)と葉以外部分に選別が行われ、葉以外の部分も「出物」というお茶になります。
葉と選別した茎だけを集めたお茶は「茎茶」と呼ばれ、通常は安価なお茶として販売されますが、本茶と比べて品質が劣るというわけではありません。
また、テアニンは茶葉よりも茎に多く含まれているため、茎茶は甘味が強くなります。
中でも、玉露の製造工程で出た茎茶は「白折(しらがね)」や「雁ヶ音(かりがね)」と呼ばれる高級な茎茶になります。
粉茶
粉茶も白折と同じく出物のお茶で、お茶を製造する工程で生じた細い茶葉のかけらを集めたお茶です。
本茶よりも安価ですが、本茶と同じ工程で製造されるため、本茶と比べて品質が悪いというわけではありません。
茶葉が細いため、味がお湯に溶け出しやすく濃厚な味わいになるのが特徴です。
味の出やすさから、ティーバッグの原料として使用されることもあります。
八女茶の入れ方
ここまでの解説で、八女茶がどのようなお茶なのかお分かりいただけたのではないでしょうか。
高品質なお茶として知られる八女茶ですが、入れ方を工夫することでより美味しく飲むことができます。
次は、八女茶を美味しく飲むための入れ方をご紹介します。
玉露の入れ方
煎茶は80°ほどのお湯で入れることが多いですが、玉露は40℃ほどと温めのお湯で入れます。
カテキンは温めのお湯で入れるとお湯に溶け出しにくくなりますが(まったく溶け出さないわけではありません。)、テアニンは温めのお湯でも比較的お湯に溶け出しやすい性質があります。
こういった性質から、低温のお湯で入れることで玉露の甘味や旨味をより味わうことができます。
分量
- 玉露茶葉:1人につき3g
- お湯:1人につき50cc
入れる手順
- 茶碗に人数分お湯を入れ、そこからさらにお湯を急須に移して、急須と茶碗を温める
- 急須のお湯を茶碗や湯冷ましに移して、40℃ほどまで温度が下がるのを待つ
- 用意した茶葉を急須に入れ、お湯を注いでふたをする
- 2分ほど浸出させる
- 茶碗に少しずつ廻し注ぎして、最後の一滴まで注ぐ
- 2煎目は50℃で1分ほど浸出
- 3煎目は60℃で1分ほど浸出
玉露は煎茶を入れるときよりも、茶葉に対する水の量が少ないため、一度に大量に入れると上手くいかないことがあります。
玉露を入れる際には、3から4人分までにしておいた方がよいでしょう。
水出し
水で入れた場合も、カテキンが溶け出しにくいため、玉露をおいしく入れることができます。
分量
玉露茶葉:水1Lにつき15g
入れる手順
- ティーバッグに用意した茶葉を入れる
- ボトルに茶葉を入れ、茶葉の量に応じた分量の水を注ぐ
- 冷蔵庫冷やしながら3時間ほど浸出
好みの濃さになるように、浸出時間は味をみながら調整した方がよいですが、あまり浸出時間を長くするとカテキンも少しずつ溶け出してくるため、徐々に渋味が出てきますので注意しましょう。
まとめ
- 八女市周辺は高品質な玉露の生産地
- 八女茶の特徴は、「芽重型の栽培」「伝統的な被覆」「甘味と旨味」
- 玉露は少量ずつ入れた方が失敗が少ない
八女茶の特徴や旬の時期、おいしい入れ方についてご紹介しました。
八女産の玉露は生産量が少なく高価なため、気軽に飲むのは難しいかもしれませんが、お茶好きなら一度は飲んでみても良いのではないでしょうか。
玉露についてもっと知りたい方は、下記の記事もぜひご覧ください。