足柄茶(あしがらちゃ)は、神奈川県の西部で生産されているお茶で、 「かながわ名産100選」にも登録されています。
そのほか、「かながわブランド」にも選定されているため、どのようなお茶なのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
この記事ではそういった方のために、足柄茶の特徴や歴史などについて詳しく解説していきますので、ぜひご覧ください。
足柄茶とは?
まずは、足柄茶がどのようなお茶なのかを理解するために、産地や歴史について解説していきます。
産地
足柄茶の産地は神奈川県西部の箱根、丹沢山麓周辺の地域です。
主な産地は相模原市、小田原市、南足柄市、秦野市、湯河原町、開成町、清川村などの山間部です。
この辺りの地域は、山間部で昼夜の寒暖差が大きく、霧がかかりやすいため平地と比べると日照時間が短いため、旨味成分を多く含む茶葉が育ちます。
歴史
足柄茶の歴史は比較的新しく、大正12年に発生した関東大震災の産業復興策として、お茶が栽培されるようになったのが始まりです。
昭和に入ると神奈川県の産業復興計画の一環として、お茶生産の拡充が図られ生産地が徐々に拡大していきました。
平成になると一部の地域で機械化を前提とするお茶の栽培も始まり、平成19年には足柄茶が地域団体商標として認定されました。
新茶の時期
足柄茶の新茶の時期は年にもよりますが、おおむね5月上旬頃です。
温暖な地域では4月の上旬頃から新茶の収穫が始まりますが、箱根や丹沢山麓周辺の地域は、お茶の産地としては比較的涼しい地域に位置しているため、そういった地域と比べると1ヶ月ほど後になります。
足柄茶の特徴
足柄茶の特徴は、「統一団体による産地直売」「じっくり成長させた茶葉」「甘味と渋味のバランス」といった特徴があります。
ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
統一団体による産地直売
足柄茶は、神奈川県農協茶業センターという県下統一の生産者団体を中心に、生産、販売体制が一元管理されています。
各産地で生産された荒茶は、神奈川県農協茶業センターに集められ、仕上げ加工が行われます。
そこから、販売者へ足柄茶を卸す産地直売方式をとっており、生産から流通まで一元的に管理することで、品質の安定と安心、安全なお茶の生産を実現しています。
一貫した管理体制をとることによって、高い品質を維持できるため生産者に高い利益を還元できるというメリットもあります。
じっくり成長させた茶葉
足柄茶の産地は、山間部に位置しており日照時間が短いため、茶葉はゆっくりと成長します。
時間をかけて育てられた茶葉は、より多くの養分を土から吸収することで、やわらかくまっすぐな茶葉になります。
また、日照時間が短いため渋味のもとであるカテキンが少ない茶葉に育ちます。
甘味と渋味のバランス
足柄茶の特徴は、甘味と渋味のバランスの良さと香りの高さにあります。
お茶を入れたときの水色(すいしょく)が澄んだ山吹色になるもの特徴です。
最近では全国茶品評会で連続受賞するなど、その品質の高さが広く認められています。
足柄茶の種類
足柄茶の多くは煎茶に加工されますが、煎茶以外にも様々な茶種が生産されています。
ここでは、足柄茶の茶種について解説していきます。
煎茶
煎茶は日本茶の中でも、最もスタンダードな方法で生産されるお茶で、収穫した茶葉を蒸気で蒸した後、揉んで形を整えながら乾燥させて作るお茶です。
玉露やかぶせ茶なども基本的には同じ方法で作られています。
煎茶は、茶葉を蒸す時間によって、浅蒸しと深蒸しに分けることができ、茶葉を蒸す時間が短い煎茶を浅蒸し煎茶、蒸し時間が長い煎茶を深蒸し煎茶と呼びます。
足柄茶の多くは浅蒸し煎茶に加工されます。
粉茶
粉茶は、煎茶を製造する際に、煎茶になる茶葉(本茶)と選別された細かく砕けた茶葉を集めたお茶です。
こういったお茶のことを出物(でもの)と呼び、茎茶なども出物に分類されます。
一般的に出物は、本茶と比べると安価で販売されていることが多いですが、本茶と同じ原料を同じように加工して作られているため、品質は自体は本茶と遜色ありません。
粉茶は茶葉が細い分、味がお湯に溶け出しやすいため、本茶よりも濃厚な味わいになるのが特徴です。
抹茶
抹茶は煎茶とは異なり、茶葉を揉まずに作るお茶です。
抹茶の製造では、まず蒸した茶葉を乾燥させて、茎の部分を取り除いた碾茶(てんちゃ)という抹茶の原料になるお茶を作ります。
抹茶はこの碾茶を臼で挽いて粉末にしたものですが、抹茶に加工すると茶葉の風味が長持ちしないため、碾茶のまま保管しておき、出荷前に抹茶に加工されます。
ほのかに甘味のあるまろやかな味わいが抹茶の特徴です。
ほうじ茶
ほうじ茶は、茶葉を高温で焙煎(焙じる)したお茶で、焙煎による香ばしい香りが特徴です。
ほうじ茶は途中までは煎茶と同じような製造工程で加工され、最後に焙煎を行う2次加工品のお茶です。
高温で焙煎することによって、茶葉に含まれるカフェインが少なくなることから、低刺激なお茶として近年注目を集めています。
紅茶
紅茶の原料は、品種は異なるものの緑茶と同じお茶の木の葉です。
茶葉は収穫後、酸化酵素の働きによって徐々に発酵が進んできますが、緑茶は発酵が進む前に蒸気で熱を加えて発酵を止める不発酵茶です。
一方、紅茶は茶葉を完全に発酵させる発酵茶に分類されます。
茶葉を発酵させることで生まれる果実のような甘い香りが紅茶の特徴です。
国内で流通している紅茶の多くは外国産で、国内での生産量は少ないですが、箱根、丹沢山麓周辺では紅茶も生産されています。
まとめ
- 足柄茶とは、神奈川県西部の箱根、丹沢山麓周辺の地域で生産されるお茶
- 足柄茶の新茶の時期は5月上旬頃
- 全国でも類を見ない県下統一の生産者団体による産地直売方式を採用
- 甘味と渋味のバランスの良さと香りの高さが特徴
- 紅茶の生産を行われている
足柄茶の特徴や歴史について解説してきました。
足柄茶は、奥久慈茶などの他の関東のお茶とは、また違った味わいがあるお茶ですので、興味のある方は一度試してみてはいかがでしょうか。
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