「くまもと茶」は熊本県内で生産されるお茶の総称で、2014年に地域団体商標に登録されました。
熊本県は国内でも有数のお茶の生産地で、中でも玉緑茶の生産が盛んに行われています。
玉緑茶は主に九州で生産されているお茶で、他の地域にお住まいの方の中には飲んだことがないという方もいるのではないでしょうか。
この記事では、玉緑茶を含む熊本県のお茶について解説していますので、ぜひご覧ください。
熊本茶とは?
まずは、熊本茶がどのようなお茶なのかを知るために、熊本茶の特徴や歴史について解説していきます。
国内有数のお茶の産地
熊本県はお茶の生産量が全国で8番目に多い県です。
【都道府県別お茶の生産量】
- 静岡県 30,700t
- 鹿児島県 24,600t
- 三重県 6,370t
- 宮崎県 3,760t
- 京都府 3,190t
- 福岡県 1,870t
- 奈良県 1,720t
- 熊本県 1,280t
- 佐賀県 1,240t
- 愛知県 914t
(出典:全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連絡協議会 茶ガイド)
熊本県で生産されるお茶の約50%が煎茶ですが、玉緑茶の生産量が盛んで、玉緑茶の生産量は全国で3番目に多い457tとなっています。
【玉緑茶の生産量】
- 長崎県 602t
- 佐賀県 596t
- 熊本県 457t
- 静岡県 168t
- 鹿児島県 155t
(出典:全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連絡協議会 茶ガイド)
全国で生産される玉緑茶の約20%が熊本県で生産されています。
これらの統計から分かるように、熊本県は国内でも屈指のお茶の生産地なのです。
産地
熊本県では沿岸部から山間部まで、県内の様々な地域でお茶が生産されています。
熊本県内最大の生産地である球磨地域は、煎茶の生産が盛んで高原台地(たかんばるだいち)にはお茶団地が形成されており、機械による大規模なお茶の栽培が行われています。
八代地方では、玉緑茶の生産が盛んで、山間部特有の霧深い気候を生かしたお茶作りが行われています。
釜炒り茶は、主に山都町や天草市付近で生産されていますが、山都町では玉緑茶の生産量も増加しています。
熊本茶の特徴
熊本茶の特徴は、ほのかな甘みとさっぱりとした味わいにあるとされています。
また、釜炒り茶には釜香(かまか)と呼ばれる釜炒り茶独特の香ばしい香りがあります。
熊本茶は、平野部から山間部まで気候の異なるさまざまな場所で生産されているため、お茶の味わいもその地域ごとにさまざまで、バラエティーに富んでいるもの特徴です。
新茶の時期
熊本茶の新茶の時期は4月の中旬頃で、新葉が5枚ほどに育つのを待って収穫します。
その年によって若干前後しますが、収穫から1ヵ月ほどでその年の新茶で作られたお茶がお店に並び始めます。
熊本県では、4月中旬に新茶を収穫した後、8月上旬ごろまでに2回お茶の収穫が行われ、年に3回ほどお茶を収穫することができます。
歴史
熊本茶の歴史は古く、現在の球磨郡相良村付近の豪族、平河氏が残した1191年の記録では、同地域でお茶の生産が行われていたとされています。
熊本のお茶の産地って?歴史や特徴、玉緑茶の美味しい入れ方を紹介
1191年 | 球磨郡相良村付近でお茶の生産が行われていたとする記録が残る。 |
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1632年 | 現在の山鹿市付近に細川藩のための茶園が開かれる。 |
1875年 | 山鹿市に日本初の紅茶伝習所が設立される。 |
1930年~ | 製茶の機械化が進み、生産地としての規模を拡大。 |
2014年 | 「くまもと茶」が地域団体商標に登録される。 |
(出典:くまもと茶ブランド確立対策協議会 くまもと茶Navi)
こういった記録から、熊本県は800年以上前から今日に至るまで、お茶の生産が行われている歴史ある産地であることがうかがえます。
熊本茶の種類
先にご紹介した通り熊本茶の約50%は煎茶ですが、その他に玉緑茶など様々な種類のお茶が生産されています。
ここでは、熊本茶の中でも代表的な茶種についてご紹介していきます。
釜炒り茶
釜炒り茶とは中国式の釜炒り製法で作られるお茶のことで、釜炒り製玉緑茶とも呼ばれます。
緑茶には、茶葉の発酵を止める殺青(さっせい)という工程があり、今日では高温の蒸気で殺青するのが主流です。
しかし、釜炒り茶は蒸気ではなく、高温の釜で茶葉を炒ることで殺青を行います。
煎茶のように茶葉の形を細長く整える工程がないため、丸みを帯びた形になっているのが特徴です。
玉緑茶
玉緑茶は熊本県内で生産量が2番目に多い茶種で、熊本茶の約35%を占めています。
玉緑茶は、蒸し製玉緑茶とも呼ばれ、殺青以外の工程は釜炒り茶と同じ作られるため、釜り茶同様に茶葉が丸みを帯びた形になります。
玉緑茶の製造では、茶葉を蒸気で蒸すことで殺青を行っており、ちょうど煎茶と釜炒り茶の中間のような方法で作られています。
釜炒り茶と比べるとやや渋みがあるのが特徴です。
煎茶
煎茶は、熊本茶の約50%を占める茶種で、全国的に最も多く生産されている茶種でもあります。
玉緑茶と異なり茶葉を蒸した後、揉みながら乾燥させて最後に細長い形に整えられます。
煎茶には、茶葉の蒸し時間が短い浅蒸し煎茶と、茶葉の蒸し時間が長い深蒸し煎茶の2種類がありますが、熊本県ではその両方が生産されています。
玄米茶
玄米茶は煎茶や番茶に炒った米をブレンドしたお茶で、2次加工品のお茶に分類されます。
玄米茶となっていますが、ブレンドする米は玄米茶だけではなく、白米やもち米などが用いられることも珍しくありません。
お茶の爽やかな香りと、炒った米の香ばしい香りが玄米茶の特徴です。
ほうじ茶
ほうじ茶も玄米茶と同じ2次加工品に分類されるお茶で、煎茶や番茶を高温でほうじて(焙煎)作られるお茶です。
煎茶や番茶だけではなく、茎茶がブレンドされることもあります。
焙煎によって生まれる独特の香ばしさが特徴で、茎茶がブレンドされているものには甘味があります。
また、高温で焙煎することによってカフェインが少なくなるため、胃にやさしい低刺激なお茶として注目されています。
熊本茶の入れ方
先にご紹介した玉緑茶と玄米茶の入れ方について解説していきます。
玉緑茶
玉緑茶や釜炒り茶は、煎茶と同様の方法で入れることができます。
【分量(3人分)】
- 玉緑茶 6g
- お湯 240ml
【入れ方】
- 急須にお湯を注ぎ、急須から湯呑にお湯を移す
- 急須に余ったお湯を捨てる
- 用意した茶葉を急須に入れる
- 湯呑の湯を急須に戻して30秒ほど待つ
- 少量ずつ回し注ぎする
- 2煎目は最初に湯呑にお湯を注ぎ 、湯呑から急須にお湯を移す
- これを人数分繰り返す
- 30秒ほど待ち、回し注ぎする
お湯を湯呑や急須に移し替えるのは、急須や湯呑を温めつつお湯の温度を調整するためです。
2煎目は、1煎目よりも味が出にくくなっているため、お湯を移し替える回数を少なくして、熱めのお湯で入れるのがポイントです。
釜炒り茶を入れる場合も手順は同じですが、浸出時間が玉緑茶より長く、60秒程浸出する必要があります。
玄米茶
玄米茶は高温の湯で入れることで、玄米の香ばしい香りが引き立つため、ポットから急須に直接お湯を注ぎます。
【分量(3人分)】
- 玄米茶 6g
- お湯 240ml
【入れ方】
- 急須に用意した玄米茶を入れる
- 急須にお湯を注ぐ
- 30秒程待つ
- お茶の濃さが均一になるよう少量ずつ回し注ぎする
- 2煎目は60秒ほど浸出させる
ほうじ茶も玄米茶と同じ方法で入れると、香りをより引き立てることができます。
まとめ
- 熊本県内で生産されたお茶を総称して「くまもと茶」と呼んでいる
- 熊本茶の新茶の時期は、4月中旬頃
- ほのかな甘味とさっぱりとした味わいが特徴
- 玉緑茶や釜炒り茶の生産量が多い
熊本で生産されているお茶についてご紹介しました。
玉緑茶や釜炒り茶に興味が湧いた方は一度試してみると良いでしょう。
釜炒り茶についてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事もぜひご覧ください。