なぜ緑茶は虫歯予防に良いと言われているのか?
日本人にとってなじみの深い緑茶ですが、古くから様々な効能あることが知られており、鎌倉時代に書かれた「喫茶養正記」には緑茶の薬としての効用が記されているそうです。緑茶の効用について科学的な研究が行われるようになったのは最近のことで、緑茶の効用の1つとして虫歯予防に効果があると言われていることをご存知でしょうか。この記事では緑茶がどのような仕組みで虫歯を予防するのかについてご紹介していきます。
虫歯を予防する3つの緑茶成分
緑茶が虫歯予防に良いと言われているのは、 緑茶に含まれている茶カテキンとインドール・フッ素の3つの成分の働きによるもので、茶カテキン・インドールには抗菌作用があり、フッ素は歯を強くする成分として知られています。
茶カテキンとインドール
虫歯ができる仕組み
虫歯の主な原因菌であるミュータンス菌が分泌する酵素は、食品中に含まれる糖から不溶性グルカンという物質を合成し、グルカンを介してミュータンス菌や他の菌が歯の表面に付着することで歯垢が作られます。さらに歯垢の中で酸が作られ、この酸によって歯のエナメル質が溶かされることで虫歯になります。
茶カテキン・インドールの作用
茶カテキンは緑茶に含まれる渋味・苦味成分で、抗菌作用によってミュータンス菌の増殖を阻害する作用と、ミュータンス菌が分泌するグルカンを合成する酵素の働きを阻害することで歯垢の形成を抑制し、虫歯の原因菌が歯に付着することを防ぎます。動物実験では糖を含む甘いお菓子に、茶カテキンを配合すると虫歯になりにくいことも分かっています。
インドールは緑茶に含まれる香気成分の1つで、インドールにもミュータンス菌に対する抗菌作用があることが報告されています。
フッ素
脱灰と再石灰化
虫歯は歯垢の中の細菌によって生成された酸によって、歯の表面のエナメル質からカルシウムやリンが溶け出すことによって始まり、これを脱灰と呼びます。再石灰化とは唾液中に含まれるカルシウムやリンが、脱灰した部分に再沈着することを指します。
フッ素の作用
脱灰部分では、脱灰と再石灰化が絶えず繰り返されており、フッ素はエナメル質の正常な部分よりも脱灰部分に取り込まれやすいという性質があるため 、フッ素が絶えず供給される状況下では、一定量のフッ素が脱灰部分に供給され続けます。フッ素には再石灰化を促進する作用があるため、脱灰よりも再石灰化の反応が強く働くようになり、エナメル質が再び硬化して正常な状態へ修復されます。フッ素が虫歯予防に良いと言われているのはこういった働きによるものです。
実際に牛の歯を使った実験や人を対象とした試験では、予め緑茶のフッ素を塗布しておいた歯は、酸による脱灰が抑制されたそうです。
歯周病予防にも
歯周病も虫歯と並んで歯を失う可能性のある口の病気で、歯と歯茎の間の歯周ポケットと呼ばれる部分に歯垢がたまり、その中で細菌が繁殖することで炎症を起こし、歯の土台である歯槽骨が吸収されると、 歯茎が後退し歯が抜け落ちる恐れがあります。
緑茶が歯周病を予防する理由
茶カテキンには歯周病の原因菌に対する抗菌性と、歯槽骨の吸収に関係するコラーゲン分解酵素の働きを抑制する作用があり、歯周炎患者を対象とした調査では、 試験管内の実験や動物実験の結果と同様の効果を発揮して歯周病を改善することが確認されました。
歯の欠失予防
中高年層にとって歯周病の予防治療は、老後の健全な食生活のために重要であるとされ、2006年に40~64歳の男女2万5千人を対象にした症例対照研究では、緑茶をよく飲む人ほど歯を失う危険性が低くなるという結果が出ました。今後の研究で緑茶を飲むことが歯の欠失を防ぐのに役立つということが明らかになるのではないかと言われています。
まとめ
・茶カテキンとインドールには虫歯の原因菌に対する抗菌作用がある。
・茶カテキンは虫歯の原因菌が分泌する酵素の働きを抑制し歯垢の形成を防ぐ。
・フッ素はエナメル質の再石灰化を促進することで歯の修復に寄与する。
虫歯の原因菌への作用と原因菌が分泌する酵素への作用、再石灰化の促進する作用から緑茶は虫歯予防に効果があると言われています。歯磨きやうがいといったオーラルケアの他に、緑茶を飲むという習慣も加えてみてはいかがでしょうか。
参考
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究所 2.機能性成分・活用性等調査-各種機能性成分を有した国産農産物-http://www.shokusan.or.jp/sys/upload/598pdf2.pdf
静岡県 ~緑茶と健康のメカニズム~機能効用ナビゲーション2013 http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-340/ryokucha_kenkou.html
伊予歯科医師会 「フッ素」って何?なぜ虫歯予防に効くの?http://www.iyodental.jp/musiba/fusso/fusso5.htm