「認知症予防に緑茶は良い」というのは本当なのか?

「認知症の予防に緑茶は良い」というのは本当なのか? 緑茶と健康

「認知症予防に緑茶は良い」というのは本当なのか?

「認知症の予防に緑茶は良い」というのは本当なのか?

緑茶が持つ多様な効能について知られるようになり、その中の1つに認知症予防が挙げられることがあります。この記事では緑茶の認知症予防作用とはどのようなものなのかをご紹介していきます。

認知症とは

認知症というのは病名ではなく記憶する能力や認識する能力などが、何らかの原因によって障害を受ける一連の症状のことを意味し、「後天的な脳の器質的障害により獲得された知的機能が持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障を生じた状態」と定義されています。以前は痴呆(ちほう)と呼ばれていましたが、現在では痴呆という呼び方は廃止され認知症と呼ばれるようになりました。

認知症の種類

日本での認知症の多くは脳血管の損傷による脳血管性認知症と神経細胞変性によるアルツハイマー型認知症が多数を占めると言われており、脳血管性認知症とは脳出血や脳梗塞によって脳の血流が障害を起こし脳の細胞が傷つけられることで、認知・記憶障害が現れる病気です。

アルツハイマー型認知症は、脳の中でβアミノロイドと呼ばれるタンパク質が増加することが原因の1つとされ、発症すると脳の神経細胞が減少、脳の萎縮、老人斑と呼ばれるシミが脳に広がるなどの変化が現れ、認知・記憶障害が見られるようになるというものです。

緑茶が認知症予防に良いとされる理由

緑茶が認知症予防に良いと言われるのは、アルツハイマー型認知症へ効果があると考えられているEGCGとビタミンの抗酸化作用によるものです。

EGCG

アルツハイマー型認知症は前述のとおりβアミロイドが原因の1つとなっていると言われていますが、βアミノロイドはAPPと呼ばれるタンパク質が酵素(βセクレターゼとγセクレターゼ)によって分解されることで作られますが、正常時にはAPPはαセクレターゼとγセクレターゼという酵素によってp3と呼ばれる物質に分解されます。

マウスを用いた実験では、緑茶に含まれるエピガロカテキンガレート(EGCG)が、βアミロイドを減少させる作用があることが示され、これはEGCGがαセクレターゼの作用を高めたためと考えられています。

ビタミン

緑茶にはビタミンA、C、E といった抗酸化作用のあるビタミンが含まれ、これらのビタミンはアルツハイマー型認知症の誘導因子の1つである酸化ストレスを軽減すると考えられています。アルツハイマー病患者の脳髄液中ではビタミンCとEの濃度が低いことが分かっており、これらのビタミンを1ヶ月間毎日摂取した場合、脳髄液中のビタミン濃度が上昇したとされています。

緑茶と認知症の発症率

東北大学による調査では、緑茶を飲む頻度が高いほど認知障害のある割合が低くなり、1日2杯以上飲むグループは週3杯以下のグループより認知障害になる割合が50%近く少なかったという結果が示されています。

緑茶の脳機能改善効果

緑茶の脳機能改善効果

緑茶にはEGCGやビタミンのように、アルツハイマー型認知症予防に役立つ成分の他にも、脳機能の改善に役立つと考えられている成分が含まれいています。

脳機能改善成分  

カフェイン

カフェインは摂取の仕方によって体への影響が異なり、大量に摂取すると痙攣や神経障害、脳の一部で異常な興奮が起こる病気であるてんかんが悪化すると言われていますが、低濃度のカテキンを長期間摂取した場合、てんかんによる障害を軽減させる可能性が示されています。

テアニン

グルタミン酸は興奮を伝達する神経伝達物質の1つで、過剰に活性化すると神経細胞を死滅させてしまいます。ラットの大脳神経細胞を用いた試験では、グルタミン酸を添加すると50%の細胞が死滅したのに対し、テアニンを同時に添加すると細胞死が抑制されるという結果が示されました。また、人はテアニンを摂取すると、リラックスしていることを示すアルファ波が検出されることから、テアニンにはリラックス効果があると考えられています。

まとめ

・EGCGはアルツハイマー型認知症の原因となるβアミノロイドの生成を抑制する。

・緑茶を飲む頻度が高いほど認知障害になる割合が低くなる。

・緑茶に含まれるカフェインやテアニンにも脳機能改善効果がある。

日本人が古くから親しんできた緑茶ですが、鎌倉時代には薬として用いられていたという記録も残っています。超高齢化社会といわれ認知症が社会問題となっている日本において、緑茶を飲むことは手軽に取り組める認知症予防の1つと言えるのではないでしょうか。

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参考

中部大学生物機能開発研究所 中央大学応用生物学部 天然生理活性物質による認知症の予防・改善について http://stu.isc.chubu.ac.jp/bio/public/ann_rep_res_inst_biol_funct/annual-report_v8_2008/pdf/004.pdf

東北大学大学院医学系研究科医科学専攻 社会医学講座公衆衛生学分野 高齢者における緑茶と認知機能との関連について https://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/index.php?q=node/346

緑茶と健康のメカニズム 機能効用ナビゲーション2013