緑茶のアレルギー緩和作用【ただし、緑茶アレルギーにはご注意を】
アレルギーは体内に侵入してきたアレルギーの原因となる花粉、ダニ、食物、化学物質などのアレルゲンに反応して、抗体が過剰に放出されることで起こる過剰な免疫反応で、花粉症や鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎などを症状を引き起こします。 緑茶にはアレルギー反応を抑制する成分が含まれ、特に「べにふうき」 という品種の茶葉には、より強力な抗アレルギー作用があることが分かっています。
緑茶にはアレルギーを抑制する成分が含まれている一方で、緑茶アレルギーによる喘息を発症した例も存在し、アレルギーを抑えるどころか悪化させてしまう場合もあるため期待し過ぎるのも危険です。この記事では緑茶の抗アレルギー緩和作用と緑茶アレルギーについてご紹介します。
アレルギー反応が起こる仕組み
アレルゲンが体内に侵入すると、それを攻撃するためのIgE抗体というタンパク質が大量に作られ、これが免疫反応で重要な役割を果たしているマスト細胞の表面と結合します。IgE抗体を介してアレルゲンが結合するとマスト細胞は、 ヒスタミンを放出しこれによって炎症が起こります。本来はウイルスや細菌などの異物から体を守るための仕組みですが、体にとって有害ではないものに対しても免疫反応が働くことでアレルギーが引き起こされます。
緑茶の抗アレルギー成分
茶カテキン
緑茶には主にエピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート(EGCG)の4種類のカテキンが主として含まれており、エピガロカテキンガレートが約50%を占めています。ラットのマスト細胞を用いた試験では、 エピカテキン以外のカテキンにヒスタミンの放出を抑える作用があることが分かっており、特にEGCGにはヒスタミンの放出を強く抑制し、これはEGCGのガロイル基と呼ばれる部分よって細胞膜が安定化されることによるものと考えられています。また、マスト細胞から放出されるヒスタミンと同じような化学伝達物質に対してもEGCGには抑制作用があることが分かっており、これにはカテキンの持つトリフェノール構造という特殊な構造が寄与している考えられています。この他、ラットの好塩基球細胞(白血球の一種)を用いた試験でもヒスタミン等の化学伝達物質の放出を抑制することが示され、この抑制作用の強さはEGCG>エピカテキンガレート>エピガロカテキン>エピカテキンであることも分かっているようです。
「べにふうき」に含まれるメチル化カテキン
「べにふうき」や「べにほまれ」という品種には、EGCGやエピカテキンガレートのがレート部の一部がメチルエーテル化したメチル化カテキンという特殊なカテキンを多く含み、マスト細胞や好塩基球のヒスタミン放出を強く抑制することが分かっており、その効果はEGCGの2倍とも言われています。
カフェイン
カフェインにもアレルギー抑制作用があることが分かっており、アレルギー性鼻炎を発症させたマウスを用いた試験では、カフェインによって症状が抑制され、カテキンと同様にヒスタミンの放出が抑制されたことによるものと考えられています。
ストリクチニン
お茶に含まれるタンニンの一種であるストリクチニンには、 アレルギー反応において抗体を作り出すリンパ球の一種、B細胞のIgE抗体生産を抑制する作用があります。
花粉症予防
スギ花粉の症状を持つ被験者を対象にした試験では、メチル化カテキンを含んでいない緑茶を摂取したグループと、「べにふうき」緑茶でメチル化カテキンを1日あたり34mg以上摂取し続けたグループ比較したところ、 メチル化カテキンを多く摂取していたグループは鼻かみの回数や目のかゆみの項目において有意な症状軽減があったとが示されています。
緑茶アレルギー
緑茶にはアレルギー抑制成分が複数含まれていますが、一方で茶カテキンに対するアレルギー反応によって喘息を発症した例も存在しています。 1994年に緑茶製造工場勤務者が発症した喘息についての調査が行われ、EGCGが原因であることが突き止められました。この喘息は緑茶喘息と呼ばれ、緑茶の粉塵を継続的に吸入したことによるもので、緑茶製造従事者に起こる職業喘息の一つとされています。
緑茶喘息は特殊な環境によるものですが、緑茶に対するアレルギーを持つ人は一定数いるようなので、人によってはむしろ体調を崩す可能性があるため注意が必要です。
まとめ
・緑茶に含まれる茶カテキン・カフェインはマスト細胞や
好塩基球細胞からのヒスタミン放出を抑制することでアレルギーを緩和する。
・ストリクチニンはリンパ球の抗体生産を抑制することでアレルギーを緩和する。
・ 茶カテキンにアレルギーを持つ人も一定数存在する。
最近はマスメディアで「べにふうき」の効果が紹介されたこともあり、茶カテキンにアレルギーを緩和する作用があることは広く知られるようになってきていますが、カフェインやストリクチニンの作用ついては知らないという方も多かったのではないでしょうか。他にも様々な健康的な成分が含まれている緑茶ですが、不調を感じる場合は無理に飲むのは避けるようにしましょう。
参考
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 野菜・茶機能性研究チーム 抗アレルギー効果のある茶葉成分
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/3/2/3_2_53/_pdf
ノートルダム清心女子大学大学院・岡山大学大学院歯科薬学総合研究所 カフェインによるアレルギー性鼻炎の抑制効果
http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/ja/55187
奥羽大学 アレルギーが起こる仕組みを理解する
http://www.ohu-u.ac.jp/faculty/research/researchP5.html
緑茶と健康のメカニズム 機能効用ナビゲーション2013