ぐり茶というお茶をご存知でしょうか。
ぐり茶の正式な名称は「蒸し製玉緑茶」で緑茶の一種ですが、煎茶とは別の種類のお茶です。
生産量が煎茶と比べると少ないため、よく知らないという方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ぐり茶の特徴や煎茶との違いについて解説していきますので、ぜひご覧ください。
ぐり茶とは?
ぐり茶はどのようなお茶なのかを理解するために、名前の由来や煎茶との違いについて解説します。
ぐり茶の由来
ぐり茶の茶葉が、ぐりっと丸まって勾玉のように丸みを帯びた形をしていることが、名前の由来になっています。
ぐり茶という呼び方は、もともと静岡県の伊豆地方独特の呼び方でしたが、現在では全国的にぐり茶という呼び名が用いられるようなりました。
玉緑茶には「釜炒り製」と「蒸し製」の2種類が存在し、釜炒り製と区別するために蒸しぐり茶と呼ばれることもあります。
歴史
1930年頃に、ソ連にお茶の輸入を打診されたことをきっかけに、ぐり茶の開発が始まったとされています。
ソ連の人々の嗜好に合わせるために、中国茶の茶葉を炒る工程を日本茶のように蒸気で蒸す工程に置き換える製法が考案され、ぐり茶の原型が完成しました。
1970年代に輸出の減少を受けて、国内向けに改良を行い日本人の味覚に合わせたものが現在のぐり茶です。
味の特徴
ぐり茶の茶葉は、丸みを帯びた特徴的な見た目をしていますが、形だけではなく味にも特徴があります。
ぐり茶の特徴は、煎茶と比較して渋味が少ないことです。
煎茶の製造工程には、茶葉の形を整える精揉という工程がありますが、ぐり茶には精揉の工程がありません。
そのため、茶葉が傷つかず旨味成分が茶葉の中に残ったままになり、渋味よりも旨味の方が強くなるのです。
ぐり茶と煎茶の違い
ぐり茶と煎茶の違いをまとめると以下のようになります。
煎茶 | ぐり茶 | |
---|---|---|
殺青の方法 | 蒸気 | 蒸気 |
精揉の有無 | 有り | 無し |
形 | 針状 | 勾玉型 |
味 | 渋味と旨味のバランスが良い | 渋みが少なくまろやか |
殺青(さっせい)とは、茶葉の発酵を止める工程のことで、日本茶では蒸気で熱を加えて殺青する方法が主流です。
殺青については、ぐり茶・煎茶ともに蒸気を用いる点は同じですが、製造工程における最大の違いは、茶葉の形を整える精揉工程の有無です。
煎茶は精揉を行うため茶葉が針のように細長くなりますが、ぐり茶は精揉を行わないため茶葉の形が丸くなります。
ぐり茶の産地
ぐり茶の主なの産地は、長崎県、佐賀県、熊本県、静岡県です。
【ぐり茶の都道府県別生産量】
- 長崎県 602t
- 佐賀県 596t
- 熊本県 568t
- 静岡県 168t
(出典:全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連絡協議会 茶ガイド 種類別の主な茶産地)
ぐり茶は主に九州で生産されており、最も生産量が多いのは長崎県です。
もともと九州では、中国から伝わった釜炒り茶の製造が盛んに行われていたこともあり、製造工程の似ているぐり茶の生産も盛んです。
それぞれの産地の特徴について解説します。
長崎県
ぐり茶の生産量が最も多い長崎県は、荒茶の生産量も全国で11番目に多い県です。
長崎県では、主に離島と山間部でお茶が生産されており、中でも東彼杵町(ひがしそのぎちょう)周辺は特にお茶の生産が盛んな地域です。
4月から5月の1番茶の収穫時期には、茶葉を覆う寒冷紗(かんれいしゃ)によって一面が真っ黒になります。
寒冷紗で日光を遮ることで、茶葉の旨味成分が増加し旨味の強いぐり茶になります。
佐賀県
佐賀県は嬉野茶の産地として知られおり、嬉野市周辺でお茶の生産が盛んに行われており、釜炒り茶の生産量は全国1位です。(出典:全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連絡協議会 茶ガイド 種類別の主な茶産地)
釜炒り茶とは「釜炒り製玉緑茶」のことで、ぐり茶が蒸気で茶葉を蒸すのに対し、釜炒り茶はその名の通り、中国茶のように茶葉を釜で炒って作られます。
熊本県
ぐり茶の生産量が3番目に多いのが熊本県です。
熊本県は、荒茶の生産量が全国で8番目に多い県で、県内の様々な地域でお茶が生産されています。
最もお茶の生産が盛んな地域は球磨地方で、煎茶の生産が盛んです。
熊本県のぐり茶は主に八代地方で生産されており、山間部特有の気候を活かしたお茶作りが行われています。
静岡県
先にご紹介したように、ぐり茶という呼び方はもともと静岡県の伊豆地方独特の呼び方でした。
静岡県はお茶の生産量が全国で最も多い県で、全国でも有数のお茶の生産地です。
また、静岡茶は宇治茶や狭山茶と並ぶ三大銘茶のひとつに数えられるほど、古くから優れた生産地として知られていました。
静岡県といえば蒸し茶のイメージが強いかもしれませんが、ぐり茶の生産量も全国4位を誇ります。
ぐり茶の入れ方
ぐり茶の美味しい飲み方について解説します。
お湯で入れる方法だけではなく水出しで入れる方法もご紹介します。
お湯で入れる場合
ぐり茶をお湯に入れる方法について解説します。
分量(2人分)
- ぐり茶 4g
- お湯 160ml
入れ方
- 用意したお湯を急須に注ぐ
- 急須のお湯を茶碗に注で、余ったお湯は捨てる
- 急須に茶葉を入れ、茶碗のお湯を急須に戻す
- 約30秒間浸出させる
- お茶の濃さが均等になるように、少しずつ回し注ぎする
2煎目、3煎目は1煎目と比べるおと味が出にくくなりますので、ポットから茶碗にお湯を注ぎ、茶碗から急須へお湯を移します。
こうすることで、1煎目よりもお湯の温度が高くなり、茶葉の味をしっかりと出すことができます。
水出しで入れる場合
熱いお茶もおいしいですが、暑い季節には冷たいお茶が飲みたくなりますよね。
そこで水出しでぐり茶を入れる方法をご紹介します。
用意するもの
- ぐり茶 10g
- 水 1L
- ティーバッグ
- 麦茶ボトル
入れ方
- ティーバッグに茶葉を詰める
- ティーバッグを麦茶ボトルに入れ、水を注ぐ
- 冷蔵庫で冷やしながら3時間から半日ほど浸出
- 好みの濃さになったら、ティーバッグを取り出す
浸出時間は、味を見ながら好みの濃さになるように、味をみながら調整しましょう。
水出して入れることによって、水に溶け出す渋み成分が少なくなるため、ぐり茶の旨味を引き立てることができます。
まとめ
- ぐり茶は精揉せずに作る緑茶の一種
- 渋みが少なくまろやかな味わいが特徴
- 九州で盛んに生産されている
ぐり茶の特徴や産地など、ぐり茶がどのようなお茶なのかについて解説してきました。
同じぐり茶でもお湯で入れた場合と、水出しで入れた場合では味わいが異なりますので、興味のある方はぜひ飲み比べてみてください。