緑茶で糖尿病予防【血糖を下げる成分とは?】
鎌倉時代の医書の一つである「喫茶養生記」には、お茶には飲水病(糖尿病)の薬として効果があることが紹介されており、古くからお茶は糖尿病に効果があるということが知られていたそうです。この記事では緑茶が血糖値を下げる理由と、効果的なお茶の飲み方についてご紹介していきます。
緑茶に含まれる血糖値を下げる成分
デンプンや砂糖などの糖質を含む食品を摂取すると、糖質が小腸の消化酵素の働きによって分解され、血液中に入ることで血糖が上昇します。健康な人ではインスリンや様々なホルモンの働きによって、正常値まで下げられ一定の範囲内に収まるように調整されていますが、何らかの理由によってこれらの調節がうまくいかなくなると血液中の血糖値が高くなってしまい、この血糖の高い状態が慢性化した状態が糖尿病です。 緑茶を飲むことによって血糖の上昇が抑えられるのは、緑茶に含まれる茶カテキンの効果によるものです。
茶カテキンの作用
消化酵素の活性抑制
茶カテキンにはデンプンを分解するα-アミラーゼやα-グルコシダーゼといった消化酵素の活性を抑制する働きがあり、分解されるデンプンの量が減り血中に入る糖が少なくなることこから、小腸での糖の吸収を阻害する効果があることが分かっています。
肝糖新生の抑制
糖新生とは体内において糖以外の物質からブドウ糖が作られることで、茶カテキンには糖新生を抑制する効果もあります。
その他の作用
茶カテキンにはこの他にも、インスリン分泌の促進や筋肉へのブドウ糖の取り込みの促進といった作用があることが分かってきており、これらの複合的な作用によって緑茶を飲むことは糖尿病予防に繋がると考えられています。
茶カテキンの血糖への影響
抹茶を含む菓子パンを摂取した場合と抹茶を含まない菓子パンを摂取した場合との血糖値の変化を比較した武庫川女子大学の実験では、抹茶を含むパンは抹茶を含まないパンと比較し、食後の血糖値の上昇が低く抑えられたという結果が示されました。
また、緑茶を1日6杯以上飲む人と1杯以下の人の糖尿病の発生率を調べた5年間の追跡調査では、6杯以上飲む人の発症率は1杯以下の人の0.67倍だったとするものもあり、この実験ではカフェインによる効果も指摘されており、緑茶に含まれるカフェインの作用によって、基礎代謝の促進や筋肉における脂肪燃焼などによって、糖尿病になりにくい状態が作り出されている可能性が指摘されていますが、コーヒーを用いたカフェインの血糖への作用を調べた別の実験では、カフェイン入りコーヒーとノンカフェインコーヒーでは、同じように血糖に作用したという結果が出ており、カフェイン単体で血糖値を下げる効果があるかどうかはよく分かっていないようです。
効果的な緑茶の飲み方
湯のみ一杯の煎茶には約100mgの茶カテキンが含まれており、カテキンの健康効果を得る為には、1日に600mg程の茶カテキンを継続して摂取する必要があるので、1日6杯程度が目安になりますが、カフェインの覚醒作用によって睡眠を妨げられるのを防ぐために、就寝前6時間以内緑茶を大量に飲むのは避けましょう。
緑茶を飲んで2時間程度で血液の中のカテキンの量は最も高くなり、その後は徐々に減少していき12時間程で完全になくなることから、カテキンの効果を得られる血液中のカテキンの濃度を保つためには、一度に大量に緑茶を飲むより少ない量を定期的に摂る方が良いと言われています。
まとめ
・茶カテキンには消化酵素の活性を抑制し、糖の吸収を阻害する効果がありこれによって血糖値の上昇を抑えられる。
・緑茶を飲むことは茶カテキンの複合的な作用によって糖尿病予防につながると考えられている。
・1日に湯呑6杯程を少しずつ継続して飲むことで、効果的に茶カテキンを摂取することができる。
緑茶が血糖値を下げる理由と緑茶の効果的な飲み方についてご紹介しましたが、糖尿病の予防には健康的な食生活や適度な運動といった健康的な生活習慣が不可欠で、その中の1つとして毎日緑茶を飲むという習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか
緑茶には血糖値を下げる以外にも、健康に良い作用があり特に茶カテキンには様々な作用があることが分かっています。緑茶に含まれるカテキンの効果についてもっと知りたいという方は、茶カテキンのページも是非ご覧下さい。
参考
緑茶及びコーヒーの飲用と2型糖尿病リスクとの関連https://publichealth.med.hokudai.ac.jp/jacc/reports/iso3/index.html
知らなきゃソンするお茶のこと 10のひみつ お茶の効用を科学する(最新版) (社)静岡県茶業協議会
茶ポリフェノールの多機能生理作用 岩井信市 昭和大学薬学部社会健康薬学講座医薬品評価薬学部門http://www.showa-u.ac.jp/sch/pharm/showa_jour_pharm/back_number/frdi8b000000ilk2-att/iwai.pdf